
本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.10.5
2008年と1929年、そして、424年
現在、世界的に議論され始めていることは、「今回の世界的な混乱が、過去のどのような混乱期に酷似しているのか?」ということであり、実際には、「2008年前後のGFC(世界的な金融混乱)」や「1929年の大恐慌」などが挙げられているが、私自身が最も注目したのは、「1600年ほど前の西ローマ帝国の崩壊」までもが指摘され始めている事実だった。つまり、現在では、「アメリカ帝国の崩壊」が、海外でも、真剣に議論され始めており、そのために、私自身としても、「世界の金融混乱がスピードを速めてきた可能性」を考慮せざるを得なくなった状況のようにも感じられたのである。
別の言葉では、「金融混乱の実態が、世界的に深く理解され始めたのではないか?」とも思われたわけだが、この点に関する注意点としては、「2008年と1929年の混乱は、どちらの場合も、民間金融機関の問題点であり、国家やグローバル共同体に関するものではなかった」という点が指摘できるものと考えている。つまり、「1929年の大恐慌」については、「1923年のドイツのハイパーインフレ」が再来する可能性におびえた「米国の金融当局者」が、「急激な金融引き締めを実施したことにより、世界的な民間銀行の連鎖破綻を引き起こした」という状況だったのである。
また、「2008年の GFC」については、「民間金融機関が簿外で大膨張させたデリバティブの残高がピークに達した事実」が指摘できるが、この時も、「1929年」の時と 同様に、「国家の財政については、健全性が保たれていた」という状況だったことも理解できるのである。つまり、「国民が抱く国家や通貨への信頼感」については、全く問題がなかったものと思われるが、今回の「2024年の混乱」については、「西暦424年前後の西ローマ帝国」と同様に、「グローバル共同体や国家、あるいは、帝国への信頼感」が喪失している状況のようにも感じられるのである。
より具体的には、「村山節(みさお)の文明法則史学」が指摘するとおりに、「西洋の物質文明が崩壊する可能性」のことであり、実際には、「覇権国が財政破綻する状況」のようにも思われるのである。つまり、「最も強い国が財政的な破綻をした場合に、通貨への信頼感が完全喪失する状況」が想定されるわけだが、過去の歴史を振り返ると、今までの約500年間は、次々と覇権国が交代し、より巨大な共同体へと移行してきた状況だったことも理解できるのである。しかし、現在は、「世界全体が、国家の財政破綻危機に見舞われる状況」となっており、この事実を、過去の歴史から考えると、やはり、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」と似たような状態のようにも感じられるのである。