本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.1.29

再燃が危惧される米国の金融大混乱

現在、米国で注目を浴び始めている出来事に、「3月11日に廃止予定のBTFP」、すなわち、「2023年3月12日に米地銀のシリコンバレーバンクの破綻を受けFRBが導入した銀行に対する融資プログラム」が挙げられるものと感じている。つまり、1月24日時点で「約1677億ドル(約24.9兆円)もの残高」を有するとともに、いまだに残高が増え続けているプログラムの廃止のことである。

別の言葉では、昨年3月に発生した「米国地銀の連鎖破綻」については、「このプログラムの実施により、さらなる連鎖破綻を防ぐことができた」と言われている状況でもあるために、現在、「プログラムの廃止により、地銀の連鎖破綻が再発する可能性」が危惧され始めているのである。そして、廃止の理由としては、いろいろな要因が指摘されているものの、私自身としては、やはり、「急速に行き詰まりを見せ始めているFRBの資金繰り」が挙げられるものと考えている。

具体的には、「約7.7兆ドル(約1140兆円)」にまで縮小した「FRBのバランスシート残高」の内訳を検証すると、「リバースレポ残高」の縮小が顕著な状況となっているために、「FRBが、今後、どのようにして資金調達を実施するのか?」に、大きな注目が集まり始めているものと考えられるのである。別の言葉では、「34兆ドルを超え、しかも、3か月に1兆ドルのペースで急増中の米国政府の債務残高」に関して、「これから、誰が米国債を買うのか?」に、大きな疑問符が付き始めている状況のことである。

そのために、今回の「BTFPの廃止」についても、「米国政府の資金繰り」が影響しており、間もなく、根本的な金融政策の変更が発表されるものと思われるが、実際には、「FedNow(米国FRBの即時決済システム)を利用した資金供給」が想定されるものと感じている。つまり、今後の資金供給の方法として、古典的な「紙幣の増刷」では、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない」という理由により、「ほぼ瞬間的な金融システムの世界的崩壊」も想定されるのである。

ただし、その後に想定される展開は、やはり、「80億人の換物運動」であり、実際には、「実質的なCBDC(中央銀行デジタル通貨)」を受け取った人々が、「紙幣への交換」を行いながら、「慌てて、市場で実物資産に交換を始める状況」であり、このことは、「政府が発行する通貨や紙幣への信頼感」が完全喪失したことにより、古典的なハイパーインフレが発生する可能性とも理解できるのである。