本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.1.17

民間マネーと政府債務

過去100年間の「世界的なマネー大膨張」を整理すると、基本的には、「中央銀行のマネー注入」と「民間金融機関のマネー創造」、そして、「政府債務の急増に伴うマネーの吸い上げ」に分類されるものと考えている。つまり、「中央銀行の創設」以降、「民間金融機関の発展」という展開が見られたものの、「1971年のニクソンショック」以降は、「民間金融機関のバランスシート大膨張」で創られた「世界のマネー」が、急速に、「政府の債務」という形で吸い上げられた展開だったものと思われるのである。

そして、この点を、「信用乗数(貨幣乗数)」、すなわち、「信用乗数=M2÷ベースマネー」という計算式から考えると、現在の「日本」では、「M2が1240兆円」、そして、「ベースマネーが673兆円」というように、「信用乗数が約1.8倍」という状況であることが見て取れるのである。つまり、「1240兆円-673兆円=567兆円」が、現在の「民間マネー」であるものの、「ベースマネーのほとんどが、政府債務である国債に投資されている状態」であることも理解できるのである。

しかも、「日本の信用乗数」については、1990年前後のピーク時に「約13倍」という状況だったものが、その後、急速に減少していることも見て取れるが、この理由としては、やはり、「金融システムの存続のために、超低金利状態が維持されるとともに、政府による民間資金の吸い上げが実施された展開」が挙げられるものと感じている。別の言葉では、「デリバティブの利用により、世界的に市場価格がコントロールされた状況」のことでもあるが、この時の注目点は、「オフバランスにおける民間金融機関のバランスシート大膨張」といえども「マネーの創造」に大きな貢献をした状況だと考えている。

しかし、現在では、「日米欧の先進各国」において、「民間のマネーが、政府の資金吸い上げと、利上げによる不良債権に悩まされる状態」となっており、その結果として、間もなく、「財政ファイナンス」、すなわち、「紙幣の大増刷かCBDC(中央銀行デジタル通貨の大量発行により、政府の債務が賄われる事態」へ進展するものと考えられるのである。

別の言葉では、現時点で、すでに、「1991年のソ連」や「1945年の日本」、あるいは、「1923年のドイツ」などと同じような状態に陥っている可能性のことでもあるが、今後の注目点としては、やはり、「いつ、どのようなキッカケで、世界的な金融大混乱とハイパーインフレが発生するのか?」であり、実際には、「デリバティブの完全崩壊」に伴う「メガバンクの破綻」が想定されるものと感じている。