本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.11.6

26年前の悪夢

現在は、「26年前の悪夢」が再来している状況とも思われるが、具体的には、「1997年8月13日に、タイから始まった『世界的な信用収縮』が、その後、約1年をかけて、世界全体を襲った展開」のことである。より具体的には、「11月4日の三洋証券の破綻」や「11月17日の北海道拓殖銀行の破綻」、あるいは、「11月24日の山一證券の破綻」そして、翌年の「長期信用銀行の国有化」や「米国LTCMの救済」などのことである。

別の言葉では、「2023年8月15日に発生した中国版のリーマンショック」と「11月3日に米国で発生したアイオワのシチズンズ・バンクの破綻」が、「26年前の金融混乱」を想起させるような状況のことである。つまり、当時は、「日本のバブル崩壊」で発生した「約300兆円の不良債権」に関して、「民間金融機関だけでは処理できなくなり、『最後の貸し手』と呼ばれる中央銀行の援助が必要な状況」だったのである。

より詳しく申し上げると、当時は、「日本」のみならず、「米国」においても、「金融システムの崩壊危機」に見舞われていたわけだが、この時に、大きな「救い」となったのが、「米国を中心としたデリバティブの大膨張」だったのである。別の言葉では、「民間金融機関のバランスシートを、オフバランス(簿外)で大膨張させる行為」であり、その結果として、「中央銀行のバランスシートの健全性が保たれた」という状況のことである。

ただし、この行為については、典型的な「問題の先送り」と「時間稼ぎ」を意味しているために、結局は、「1997年から26年後の2023年に、約30倍規模の金融大混乱に見舞われている状況」となっているのである。つまり、今後は、「世界のいたるところで、金融機関の破綻が予想される展開」が想定されるとともに、「金融大膨張の本丸」ともいえる「デリバティブ」に絡んだ大事件の発生も予想されるのである。

より具体的には、「米国のメガバンク」までもが「破綻の危機」に見舞われる可能性のことでもあるが、実際のところ、現在では、「CMBS(商業不動産担保証券)に関する大量の損失」や「国債価格の暴落が引き起こすデリバティブの巨大損失」などに関して、市場の注目が集まっている状況ともいえるのである。別の言葉では、「26年前の日本と比較して、約30倍の規模で、金融機関の破綻が懸念されている状況」とも思われるが、今回の問題点は、「30年前のデリバティブ」のような「新たな救いの方法」が存在せず、「最後の貸し手」である「中央銀行」による「紙幣の再増刷」か、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」しか、手段が残されていない状況とも理解できるのである。