本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.9.6

BRICS新通貨の実現可能性

現在、海外の金融市場では、「BRICS諸国による、金(ゴールド)を裏付けとした新通貨の実現可能性」が、さかんに議論されているが、ほとんどの意見は、「貨幣の歴史」を無視した「暴論」とも言える内容のようにも感じている。つまり、過去の歴史を吟味すると、「新たな通貨制度の出現」は、常に、「それまでの通貨制度の崩壊」、すなわち、「既存の貨幣が価値を失う展開」を伴うことが理解できるのである。

別の言葉では、現在の「1971年から始まった信用本位制と呼ぶべき通貨制度」に関して、「金融システムに存在する大量のデジタル通貨が価値を失う状況」のことであり、このことが、私の想定する「約600兆ドルのOTCデリバティブ]と「約330兆ドルの世界債務残高」という「目に見えない金融ツインタワーが崩壊する事態」のことである。つまり、大量の「紙幣」、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」が発行され、その結果として、「実物資産」の価格が急騰する展開のことである。

より具体的には、「生活に必要な物資」に対して、「世界中の人々から、大量の需要が、急激に発生する状況」であり、実際には、「1991年のソ連」や「1980年代の中南米」のようなハイパーインフレが、世界全体で発生する事態である。そして、この原因としては、過去20年に大膨張した「デリバティブ」が、大量の「デジタル通貨」のみならず、「返済不能な世界の債務残高」を作り上げた点が指摘できるものと考えている。

そのために、数多くの政府や中央銀行は、今までに、大量の「金」や「銀」を買い集めてきた状況でもあったが、今後、想定される展開としては、最初に、「神様となったデジタル通貨が、単なる紙切れに移行する事態」、すなわち、「ハイパーインフレ」と言われるものが発生する状況でもあるが、実際のところ、「1923年のドイツでは、約6ヶ月間で、紙幣の価値が無価値になった」という状況だったことも見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「ケインズ」が指摘するように、「100万人に一人も気付ないうちに発生するインフレ(通貨価値の下落)」は、「ランナウェイ・インフレ(手に負えず、制御できないインフレ)」という言葉のとおりに、「あっという間に逃げ去っていくような展開」となることも想定されるのである。つまり、「目に見えない金融ツインタワーの崩壊」により、世界経済が、きわめて深刻な「信用消滅」、あるいは、「マネーの消滅」に見舞われる結果として、大量の「紙幣」や「デジタル通貨」が発行され、その結果として、「80億人の人々が、慌てて、換物運動に走り始める可能性」のことである。