本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.8.22

金利とインフレ

現在、マスコミで言われていることは、「金利を上げれば、インフレ率が低下する」ということであり、この点については、「1980年前後に実施されたボルカー元FRB議長による高金利政策」が参考にされている状況とも言えるようである。つまり、「インフレ率を上回る水準にまで金利を上げれば、その後、自然にインフレ率が低下を始める」という理解のことでもあるが、私自身は、この点について、大きな注意が必要なものと感じている。

具体的には、「米国の中央銀行であるFRB」が誕生した「1913年」以降の世界を、「貨幣」の観点から俯瞰すると、実際には、「1933年に米国の金貨本位制が廃止され、また、1944年のブレトンウッズ会議により、金地金本位制から金為替本位制へと変更された」という状況だったのである。そして、その後の「1971年のニクソンショック」では、「約6000年の歴史」を持つと言われる「貨幣」において、人類史上、初めて、通貨と商品との関係性が断たれる「金本位制からの離脱」までもが実施されたのである。

その結果として、過去52年間の「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」の期間に発生した現象は、「未曽有の規模でのマネー大膨張」であり、また、「借金漬けの経済成長が産み出した地球の環境破壊」だったことも理解できるのである。つまり、「自然は征服すべき対象である」という「西洋的な認識」のもとで、「経済的な成長」や「物質的な奪い合い」などが発生したことが、「マネー大膨張」の真因だったものと考えられるのである。

そのために、現時点で必要なことは、「過去100年余りの期間に、どのような商品が産み出され、また、経済成長に伴って、どのような貨幣が創り出されたのか?」を正確に理解することとも言えるのである。別の言葉では、「お金の性質」である「貨幣がストック(残高)であるために、ハイパーインフレにより、最終的に価値を失う可能性」を考慮しながら、今後、「どのような貨幣が、どのような商品に向かうのか?」などを、詳しく、かつ、正確に理解することである。

そして、これから想定される展開としては、「大量に存在するデジタル通貨が、きわめて小さな実物資産の市場に殺到する事態」であり、このことは、「劇場の火事」に例えられる「ボトルネック・インフレ」を意味しているものと理解できるのである。つまり、「影も形も存在しない『単なる数字』が、現代の通貨となった現状」において、「裸の王様」のような転換が発生する可能性のことでもあるが、実際には、「バブルの崩壊後」に、初めて、どれだけ異常な事態が発生していたのかに気付かされる可能性も想定されるようである。