本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.4.2

OTCデリバティブを巡る最終攻防戦

「シリコンバレー銀行の破たん」以降、世界の金融市場では、「OTCデリバティブを巡る最終攻防戦」に入ったものと考えているが、実際には、「国債価格の暴落を防ぐために、さまざまなプログラム売買が発動されている状況」のことである。あるいは、「FRBのバランスシート残高を急激に再膨張させることにより、国債価格の上昇、そして、金利の低下を目論んでいる可能性」のことでもあるが、この理由としては、{量的縮小(QT)政策」の失敗が指摘できるものと感じている。

つまり、今回の「量的縮小(QT)政策」については、「金利の急上昇」と「FRBのバランスシート残高の縮小」が、同時に実行されたことにより、「米国の中央銀行であるFRBの財政的な健全性」が向上したものの、一方で、「米国の民間金融機関」に対して、大きなゆがみが発生したことも見て取れるのである。別の言葉では、「1929年の大恐慌」の時のように、「国家財政」を優先させて、「民間金融機関の連鎖破たん」を引き起こした状況が再現されそうな展開のことである。

そのために、世界各国の中央銀行は、慌てて、「QT(量的縮小)からQE(量的緩和)への再転換」を図ったものの、今後の問題点としては、「中央銀行のバランスシートを、どのようにして増やすのか?」という「根本的な問題」が指摘できるものと感じている。つまり、今までは、「民間金融機関からの借り入れ」、あるいは、「OTCデリバティブの維持」などにより、「国債の購入」、そして、「超低金利状態の維持」が可能だったものの、最近では、「デジタル通貨の実物資産への移行」により、「インフレ率や金利の急上昇」に悩まされる展開となったのである。

より具体的には、「リフレーション政策」から「インフレ政策」への移行段階に差し掛かったものの、現在は、「金融機関の連続的な破たん」により、「デジタル通貨が、一挙に、安全と思われる金融機関に移行を始めた段階」に入ったものと想定されるのである。つまり、「世界的なコンピューターネットワークの弊害」が露呈し始めた可能性のことでもあるが、今後は、より大きな問題、すなわち、「中央銀行のバランスシート増大」に関して、従来の「紙幣増刷」という手法では、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない問題」に直面することも考えられるのである。そのために、現在では、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」が真剣に議論されているようだが、基本的な理解としては、「世界中で、政府や金融システム、あるいは、通貨への信用が崩壊している状況下では、実物資産への資金移動が止められない展開」が指摘できるものと感じている。