本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2023.3.6

負の資産効果

現在は、「米国」を中心にして、世界的な「負の資産効果」が働いている状況とも思われるが、一方で、今までは、反対に、「正の資産効果」が働いていた状態、すなわち、「株価や債券価格、あるいは、土地価格などの上昇した資産の売却などにより、消費や投資などの支出が増えていた状態」だったことも見て取れるのである。しかし、現在では、前述のとおりに、「2022年」に顕著となった「株価や債券価格、あるいは、不動産価格の下落」などにより、「金融システムの構成部分」である「政府や中央銀行」、あるいは、「民間金融機関」や「民間企業と個人」などの全てにおいて、「収入減と支出増」という「資金的なひっ迫状態」に見舞われているものと思われるのである。

より詳しく申し上げると、今までは、「政府や中央銀行の資金繰り」に関して、「財政ファイナンス的なリフレーション政策」、すなわち、「中央銀行が、民間部門から資金を借りて国債を買付けることにより、超低金利状態を維持する政策」が実行可能だったが、現在では、「民間の金融機関」のみならず、「企業や個人」までもが、「金利やインフレ率の上昇」により、「支出コストの上昇」に見舞われていることも理解できるのである。

その結果として、現在では、「政府と中央銀行」に対して、強烈な「資金繰りの問題」が発生している可能性が想定されるが、実際のところ、「日本」においては、「日銀の共通担保資金供給オペ」という「日銀が民間金融機関に資金を貸し出し、国債を買い付けることにより、金利の低下を目論む政策」までもが実施されているのである。つまり、「ありとあらゆる手法を駆使することにより、金利上昇を抑えたい思惑」が存在するものの、一方で、このことが、「急速な資金ひっ迫」を引き起こしている可能性も想定されるのである。

より具体的に申し上げると、現在のような「2年国債と10年国債の逆イールド現象」については、典型的な「国債の買い支え」が主な原因として指摘できるものと思われるために、今後の注目点としては、「1991年のソ連」のような崩壊パターン、すなわち、「最初に、長期国債の買い手が消滅し、その後に短期国債の買い手が消滅したときに、紙幣の増刷が始まる展開」が指摘できるものと考えられるのである。

つまり、現在は、「金融システムを構成するほとんどの部門で、負の資産効果が働き、資金繰りがひっ迫し始めている状況」とも思われるが、前述のとおりに、このことは、今後、「中央銀行が最後の貸し手となり、紙幣の増刷を始める状況」が予想されるとともに、現時点では、「時間的な余裕」が消滅し始めている段階のようにも感じられるのである。