本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.12.8

景気悪化とハイパーインフレ

現在、「景気の悪化により、再び、デフレの時代が訪れる」というような意見が主流となりつつあるようだが、この点に関して、「過去100年間に、30か国以上で発生したハイパーインフレ」を検証すると、全く違った姿が見えてくるものと考えている。つまり、「1971年以前の西側諸国」と「1971年以降の中南米や東欧諸国」において、「景気の悪化」と「ハイパーインフレ」が同時に発生した状況のことである。

より詳しく申し上げると、「1971年以前の西側諸国」では、主に、「戦争などによる実体経済の落ち込み」が原因となり、「国家財政の破綻」が引き起こされたが、一方で、「1971年以降の中南米や登校諸国」では、「マネーの大膨張が引き起こした実体経済の変化」が、結果として、「税収の落ち込みと国家財政の破綻」を引き起こしたものと想定されるのである。つまり、どちらの場合にも、「通常の景気循環」ではなく、「金融危機が引き起こす国家の財政破綻」が「ハイパーインフレの主因」だった可能性のことである。

しかも、今回は、「過去20年余りのデリバティブとマネーの大膨張」により、「西側諸国の国家財政問題が、より一層、危機的な状況に陥る可能性」も想定されるが、実際には、「超低金利状態の維持により、国家の債務が異常な規模にまで膨らんだ状態」となっていることも見て取れるのである。別の言葉では、「インフレ率や金利の上昇により、債務の負担が急上昇し、資金繰りがひっ迫する可能性」のことだが、現在は、「誰が国債を買うのか?」までもが問題視されるような状況となっているのである。

つまり、「1991年のソ連で発生した事件」、すなわち、「国債価格の暴落とともに、あっという間に、国家の財政が破たんした展開」が、まさに、「世界全体で発生しつつある状況」のようにも感じられるのである。そのために、現時点で必要なことは、「景気が悪化すると、商品への重要が減少し、デフレの状態に陥る」というような意見を鵜吞みにするのではなく、反対に、「景気の悪化は税収減につながり、その結果として、資金繰りにひっ迫した国家が紙幣の増刷を始める可能性」を憂慮すべきだと考えている。

そして、そのような状況下で投資すべき対象としては、決して、「国債などの債券」ではなく、「衣食住」という「生活に必要な物資」にかかわる株式や、あるいは、「本来のマネー(お金)」とも言える「金や銀、そして、銅やプラチナなどの貴金属」だと考えているが、この点については、間もなく、「誰もがはっきりと認めざるを得ないような大事件」が発生するのではないか、と感じている。