本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2022.10.19

ジャスト・イン・タイムの終焉

「トヨタの生産方式」を象徴する「JIT(ジャスト・イン・タイム)方式」に、現在、約50年ぶりの転換点が訪れていると報道されているが、この理由としては、「商品価格の上昇により、在庫の保有が利益に結び付く状況」を表しているものと考えている。つまり、「負債の残高は、ほぼ一定額で推移するものの、資産の残高は、増減に見舞われる」という「バランスシートの非対称性」により、「価格が上昇する資産の保有」は、企業の利益にとって、大きなメリットが存在することも見て取れるのである。

そして、過去50年間は、「在庫を減らすことが企業の利益に繋がった」という状況であり、この事実は、「過去50年間が、通貨価値の上昇を意味するデフレの時代だった」という短絡的な結論に繋がりやすいものと思われるのである。つまり、「1923年のドイツのハイパーインフレ」や「1929年の米国大恐慌」をキッカケにして、それぞれ、「インフレ」や「デフレ」が経済用語として定着したのだが、実際には「過去50年間の展開を振り返ると、さまざまな問題が発生したのではないか?」とも感じている。

具体的には、「オカネとモノの関係性」において、「1971年のニクソンショック」以降、「大量のデジタル通貨が創られるとともに、この資金が、デリバティブなどの金融商品に流れ込んだ状況」のことである。別の言葉では、「既存の経済学が取り扱う実体経済と比較して、数倍もの規模でマネー経済が発達した状況」となり、しかも、「金利のみならず、株価や商品市況までもが、デリバティブの利用により、政府やメガバンクなどが、価格操作を実施した可能性」のことである。

そのために、今回の「ジャスト・イン・タイムの終焉」については、従来の「デフレやインフレの概念」ではなく、「金融界のブラックホールに隠されていた大量のデジタル通貨の終焉」という理解の方が正しい状況のようにも感じている。つまり、「金融界のホーキング放射」という「大量のデジタル通貨が、紙幣に形を変え、市場に出回る状況」が始まる可能性のことである。

また、この時に必要なことは、「政府と中央銀行の関係性」を理解することであり、実際には、「赤字に陥った中央銀行の救済のために、政府が、大量の資本注入を実施する可能性」である。そして、具体的な方法としては、「財務省が印刷した紙幣が中央銀行へ注入され、その後、民間金融機関を通じて、市中に出回る状況」でもあるが、この点については、典型的な「ハイパーインフレの発生」を意味しているものと考えている。