本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.10.4

買い手不在の債券市場

最近、世界的に議論され始めたことは、「今後、誰が、債券を買うのか?」ということであり、実際の状況としては、「金利の上昇により、今後、値下がりが予想される国債などを買う主体が見当たらない状況」とも言えるのである。別の言葉では、「国債の買い手だった中央銀行のバランスシート」に関して、最近、「残高の縮小」が発生しているために、現時点で必要なことは、「国家財政の仕組み」を理解する必要性とも思われるのである。

具体的には、「戦後の日本」を見れば明らかなように、当初は、「税収で、国家の歳出を賄う状況」だったものが、その後は、「将来の税金」とも言える「国債の発行」により、「国家の財政赤字を埋め合わせる状況」に変化したことも見て取れるのである。そして、この点については、「日本」のみならず、「米国」や「欧州諸国」でも同様の状態だったが、今回、最も注意すべき点は、やはり、「1971年のニクソンショック以降、世界の通貨制度が、私が主張する信用本位制に変化した事実」であり、また、「1980年代の初めから、デリバティブの残高が天文学的に大膨張した事実」だと考えている。

つまり、結果としては、「デリバティブの残高大膨張」で恩恵を受けた「メガバンク」と「先進各国の中央銀行」が、「2008年のリーマンショック以降、きわめて異常な超低金利状態を作り出した状況」とも言えるのである。別の言葉では、「国債の大量買い」により、「ゼロ金利」や「マイナス金利」という、歴史的に、きわめて異常な事態が発生したものの、現在では、「国債を買う資金が欠如した状況」に陥ってしまったのである。

そのために、現在では、「国債の価格」のみならず、「株価」や「商品価格」までもが急落する展開となったわけだが、今後の注目点としては、「先進各国の中央銀行が、今後、どのような政策を選択するのか?」が挙げられるのである。つまり、「このまま、株価や商品価格、そして、国債価格の暴落を容認するのか?」、それとも、「最後の手段である古典的な金融政策を実施するのか?」ということである。

具体的には、唯一残された「紙幣の大増刷」のことだが、この点について、今までの推移を振り返ると、「紙幣増刷の規模が、あまりにも巨大になりすぎる可能性」や「現在のデジタル通貨が、今後、ほとんど役に立たなくなる可能性」も指摘できるものと思われるのである。つまり、「世界全体で、数京円という規模の債務を減少させる必要性」があるために、これから必要とされる「紙幣発行の規模」が、「1923年のドイツ」や「1945年のハンガリー」などを、はるかに上回る可能性のことである。