本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.8.24

負のシニョリッジ

8月24日の日経新聞に、「日銀の財政を問う」というコラムが掲載され、「量的引き締め、政策金利引き上げのスピードと程度、長期金利引き上げのスピードと程度の3つの変数をコントロールすることで、日銀の赤字(負のシニョリッジ=通貨発行益)を避けることは可能だ」という結論が紹介されていたが、実際には、「投資の実践」を無視した「大本営的な意見」、あるいは、「机上の空論」のようにも感じられた次第である。

別の言葉では、「日銀の失敗」に関する議論で、将来的に、紹介されそうな意見のようにも感じられたために、今回は、「何が問題なのか?」を簡単に説明させていただくが、基本的には、「1991年のソ連で、どのような展開が繰り広げられたのか?」が、ほとんど無視された意見のようにも感じている。つまり、「国債価格の暴落」に関しては、確かに、「満期まで保有すれば、原価法の適用により、損失が発生しない状況」でもあるが、この点に関する問題は、「金利の急騰時に、どのような方法で、負債項目の当座預金を処理するのか?」とも言えるのである。

具体的には、「短期金利が、仮に3%にまで上昇すると、日銀の赤字が急増する事態」も想定されるが、このような状況下で、日銀のバランスシートに発生する変化としては、「当座預金に対して3%の金利を払うことができず、当座預金残高の急速な減少に見舞われる展開」とも考えられるのである。つまり、「量的引き締め(QT)」が意味する「日銀のバランスシート急減」を実行するためには、「国債の保有残高」と「当座預金の残高」を同時に減少させる必要性が存在するが、仮に、「値下がりした国債の売却」を実施すると、その時には、「巨額の売却損」の発生も予想されるのである。

そのために、今後、日銀が取れる方法としては、「1991年のソ連」や「1945年の日本」で実施されたように、「大量の高額紙幣を増刷する古典的な方法」とも想定されるのである。つまり、「ハイパーインフレで、国家債務を減少させる方法」のことでもあるが、この点に関して、現在、注目すべき事実は、「1971年のニクソンショック以降、きわめて巨額なデジタル通貨が発行された事態」だと考えている。

より詳しく申し上げると、「人類史上、きわめて異常な状態」となっている、「現在のマネー(お金)バブル」に関して、今後、「紙幣の大増刷とともに、世界中の人々が、一挙に、デジタル通貨を実物資産に移行させる可能性」、すなわち、「未曽有の規模でのハイパーインフレが、世界中で、一挙に発生する可能性」が憂慮される事態である。