本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.8.17

日銀の変調

イエレン財務長官が初訪日した「7月12日」の前後から、「日銀のバランスシート」に変化が起き始めているようだが、実際のところ、「全体の残高」に関しては、「6月20日の約742兆円」が「8月10日の約725兆円」まで、「約17兆円の減少」となっているのである。また、「当座預金の残高」についても、「564兆円から529兆円まで、約35兆円の減少」という状況となっているが、この要因としては、「世界的な資金ひっ迫現象」が指摘できるものと感じている。

つまり、今までは、「民間金融機関から中央銀行への資金貸し付け」、そして、「中央銀行による国債の大量買い付け」という構図により、先進各国で「超低金利状態の維持」が可能だったものと想定されるのである。そして、この理由としては、「メガバンクが大量保有するデリバティブのバブル崩壊」を防ぐ点が指摘できるが、現在では、「中央銀行のバランスシートを増加させる従来の手法」に問題が発生したものと考えられるのである。

より詳しく申し上げると、「中国の不動産バブル崩壊」や「世界的な債券価格の下落(金利は上昇)」、あるいは、「世界的な株価の下落」などにより、「民間部門において、資金的なひっ迫状態が発生した可能性」のことである。つまり、現在では、「中央銀行から民間銀行への資金逆流」が始まっているものと思われるが、この点に関して、今後、特に注目すべきポイントは、「日銀の当座預金残高」だと考えている。

具体的には、前述の「35兆円の残高減少」が、「日銀の資金繰りがひっ迫し始めた状態」を表している可能性のことだが、この点に関して気になる出来事は、「みずほ銀行が、7600万円の金利を払い、9000億円もの当座預金を、マイナス金利で積み立てた事実」だと感じている。つまり、現在では、「民間金融機関における急速な資金ひっ迫」や「日銀が、当座預金残高の急激な収縮圧力に晒され始めた可能性」、あるいは、「今後、この圧力が急速に上昇する可能性」などが指摘できるものと考えられるのである。

そして、「バランスシート残高を増やすために、今後、中央銀行が取れる手段」として考えられることは、やはり、「紙幣の増刷」とも言えるが、今回の問題点は、やはり、「世界全体が、大量のデジタル通貨であふれた状況」とも言えるのである。つまり、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれる「デリバティブ」のバブルが崩壊すると、その時には、「世界全体に、金融界の白血病、そして、未曽有の規模でハイパーインフレを引き起こす可能性」が想定されるからである。