本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.7.21

座して死を待つ世界の金融システム

7月15日と16日に開催された「20ヶ国財務大臣・中央銀行総裁会議」に関して、「BIS(国際決済銀行)」が提出したレポートを読むと、現在の「世界の金融システム」は、まさに、「座して死を待つ状態」のようにも感じられた次第である。つまり、このレポートでは、「マクロ金融安定化フレームワーク(MFSF)」という「新たな概念」を紹介しながら、「世界的な金融情勢の波乱に関連するリスクにどのように対処するか?」を述べているが、実際には、「禅問答」のような内容となっていることも見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「MFSFは、金融、財政、マクロプルーデンス政策と為替介入や資本フロー管理策を全体的な枠組みの中で組み合わせたものである」とのことだが、実際には、「概念」にすぎず、「実施」の面では、いろいろな問題があるとも説明されているのである。別の言葉では、今まで、「金融政策」や「財政策」、そして、「マクロプルーデンス政策」という「金融システムの安定化を目論む政策」などが、個別で実施されてきたものの、現在では、「フレームワーク」という、全体的な方法でしか対処できなくなったものと理解されているのである。

そのために、この点を、「四次元の経済学」で分析しながら、対応策を検討すると、実際には、「2008年前後のGFC(金融大危機)」から発生した「デリバティブのバブル崩壊」への対処法が問題だったことも理解できるようである。つまり、「欧米のメガバンクが保有する大量のデリバティブ」に関して、今までは、「中央銀行のバランスシートを増やして国債を買い付け、超低金利状態を維持する方法」が取られてきた状況だったのである。

別の言葉では、今まで、「国民の預金」など「ありとあらゆる資金を借りて、市場の価格コントロールを目論む方法」が可能だったが、現在は、「中央銀行のバランスシートを増大させる手段」に関して、「紙幣の増刷」という古典的な方法しか残されていない状況とも理解できるのである。つまり、「デジタル通貨」が「実体経済」に漏れ出した結果、「金利やインフレ率の上昇」という変化に見舞われたために、現在では、「口先介入」や「大本営的な発表」でしか、問題の発生を遅らせる手段が存在しない状況とも言えるのである。

そして、後は、「金融界の大量破壊兵器」と言われた「デリバティブ」が破裂する瞬間を、世界全体が、固唾を飲んで見守っている段階とも思われるが、この点に関して、最も注目すべき事実は、やはり、「1971年のニクソンショック以降に創られた大量のデジタル通貨が、今後、使えなくなる可能性」だと考えている。