本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.6.23

西洋文明の道徳的負債

6月22日の日経新聞に掲載された「スイスの経済的脱中立」の記事には、いろいろな面で刺激を受けたが、その理由としては、「道徳的な負債」という言葉が指摘できるものと感じている。つまり、スイスは、今まで、経済的な中立の態度を貫いてきた状況でもあったが、今回の「ロシアへの制裁」に関しては、大きく態度を変え、「ロシアからの天然資源の禁輸という措置を講じた」とも報道されているのである。

そして、この点に関しては、「800年間にわたり継続してきた西洋物質文明の終焉」を象徴する出来事の一つのようにも感じられたが、その理由としては、「経済的な繁栄よりも、道徳的な負債を重視した」という点が挙げられるようである。つまり、「1600年前のローマ帝国」と同様に、「西ローマ帝国のような富に仕える時代」が終焉し、「東ローマ帝国のような神に仕える時代」が始まった可能性のことである。

より詳しく申し上げると、「スイス」という「富を象徴する国」において、「道徳的負債」が発生したことは、いわゆる「罪の意識」が芽生えた状況とも思われるが、実際には、「地球環境を無視して、人類が経済的な繁栄を望んできた歴史」や「ロシアによる非人道的、かつ、帝国主義的な行為」などに関して、「このままではいけない」という「強い思い」が発生したものと想定されるのである。

別の言葉では、「精神的な空虚感」が発生した状況とも思われるが、実際には、「スイスの銀行内に存在する数多くの金庫内に、どのような資産が存在するのか?」という事実について、冷静な目で眺め始めた可能性のことである。つまり、本来の「マネー(お金)」である「金(ゴールド)」や「政府の発行する紙幣」などについては、きわめて小さな金額にすぎず、ほとんどの資産が、「デジタル通貨」という「影も形も存在しないマネー」に変化してしまった状況のことである。

そのために、現在、彼らが感じていることは、「何のために、我々の人生が存在しているのか?」という疑問のようにも思われるが、実際には、このことが、前述の「西ローマ帝国から東ローマ帝国への極端な移行」が発生した主因とも考えられるのである。ただし、今回は、1600年前とは違い、「量子力学」や「分子生物学」、あるいは、「複雑系の科学」などの存在により、「自然科学」のみならず、「社会科学」の劇的な発展が展開される可能性に期待しているが、実際には、「デリバティブのバブル崩壊」が引き起こす「デジタル通貨の瞬間的な消滅」が、直接的なキッカケになるものと感じている。