本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.12.14

日銀の国債買い現先オペ

12月13日に「日銀の国債買い現先オペ」が実施されたが、この理由としては、「短期金融市場におけるレポ金利の上昇」が指摘されている。また、オペの通知と実施が同日の「即日オペ」については、「2006年7月以来、15年ぶりの出来事である」とも報道されているが、この記事に関して、私自身が注目したのは「日銀の資金繰り」だった。

つまり、「金利上昇を抑えるために、国債の買い現先オペを実施する」ということは、「日銀のバランスシート」に関して、「資産項目である『国債の保有』と『貸付金』の残高を増やす効果」が存在するものと考えられるのである。別の言葉では、「負債項目を、どのように増やすのか?」という点が気にかかる状況であり、実際には、「発行銀行券」を増やす方法が考えられるようである。

より詳しく申し上げると、「2001年」以降、日銀は、「準備預金」を「当座預金」という名称に変更し、「当座預金の残高増加は金融緩和政策を意味する」と主張し続けてきたが、現在では、「民間部門からの資金借り入れ」を意味する「当座預金残高の増加」が難しくなっているのである。そして、結果としては、最後の手段である「紙幣の増刷」が始まる段階に差し掛かってきたものと思われるが、この手段として、最初に実施されるのが、今回の「国債の買い現先オペ」とも想定されるのである。

つまり、法律で禁止された「財政ファイナンス」、すなわち、「中央銀行による新発国債の買い付け」を回避する手段としては、「増刷された紙幣を民間金融機関に貸し出す方法」が予想されるが、今回の「国債買い現先オペ」は、この点に関して「予備的な行為」だったようにも感じられるのである。別の言葉では、「金利上昇時に、日銀は、どのような手段が実施可能なのか?」を考えると、現在では、「日銀券という紙幣を大量発行し、貸付金という形で市場に資金を供給する方法」しか残されていない状況とも思われるのである。

そのために、今後の注目点としては、「資金の枯渇」が引き起こす「金利上昇」に関して、「先進各国の中央銀行が、どのような手段を講じるのか?」が指摘できるが、実際には、「テーパリング」という「国債買い付け残高の減少」ではなく、「利上げ」という方法が取られるものと考えている。ただし、この方法を取る場合には、前述のとおりに、「中央銀行が、より大きな資金供給を実施する必要性」に迫られることも予想されるために、実際には、「紙幣の増刷」という「古典的なインフレ政策」が、先進各国で、大々的に実施される展開が考えられるようである。