本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.7.23

量的緩和の正当性

最近、海外では、「テーパリングの議論」が盛んに行われるとともに、より根本的な問題である「量的緩和(QE)」とは、いったい、何だったのか?」という疑問が噴出し始めている。つまり、「量的緩和の持続」が難しくなった結果として、「量的緩和の正当性」が疑われ始めているわけだが、実際のところ、「日銀のバランスシート」ついては、「残高が約720兆円」というように、「約560兆円」と推計される「日本の名目GDP」の「約1.28倍」という「驚くべき規模」にまで膨れ上がっているのである。

つまり、今まで取られてきた「国民の資金を借りて、国債の大量買いを実施し、超低金利状態を作り出して、国家の財政破たんを先送りする」という方法論については、「国民が実情に気づかず、後生大事に、虎の子の預金を保有し続ける態度」が継続していたことが、持続可能な要因の一つだったのである。そして、海外の諸国においても、「日本の一時的な成功例」を見習って、同様の「きわめて無謀な金融政策」を実施してきたものの、現在では、「どこまで、このような政策が実施可能なのか?」、あるいは、「今後、どのような結果が待ち構えているのか?」などの疑問が噴出し始めているのである。

より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(大金融危機)」の時に「約8京円」という残高のピークを付けた「デリバティブ(金融派生商品)」に関して、今までは、「量的緩和」という名のもとに、「水面下での問題解決」が図られていたものの、結果としては、「約2京円の残高縮小」しかできなかったのである。そして、現在では、「金利やインフレ率の上昇、そして、利用可能な国民資産の枯渇などにより、従来の方法が取りづらくなった状況」とも言えるのである。

別の言葉では、「紙幣の増刷」しか残されていない状態とも言えるわけだが、仮に、この方法が実施されたときには、「前代未聞の規模での大インフレが世界全体を襲う可能性」が存在するのである。つまり、「お金の価値の激減」、しかも、「デジタル通貨の完全消滅」という可能性が存在するために、「世界各国の金融当局者は、座して死を待つような状況」となっているのである。

より具体的には、「金融界の大量破壊兵器と言われるデリバティブの時限爆弾が、いつ、連鎖破裂を始めるのか?」に怯えている状況とも言えるが、基本的には、「オリンピック」が終了する「8月」、あるいは、「9月」が、過去の歴史などを研究すると、最も危機的な時期になるものと感じている。