本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.6.15

真の信用乗数

過去20年間は、「デリバティブが大膨張した期間」であり、この結果として、「経済理論」においても、従来とは違った展開となったようにも感じている。具体的には、「インフレ」や「デフレ」に関して、「デリバティブ」が過剰な影響を及ぼした可能性でもあるが、この点を理解するには、「どのような通貨が、どのような商品に流れたのか?」、あるいは、「真の信用乗数」を理解する必要性でもあった。

つまり、「信用乗数」とは「中央銀行が出したお金が、市場で何倍にまで膨れ上がったのか?」を計測する指数であり、このことから理解できることは、「通貨(マネー)に対する市場の信用度」ということである。別の言葉では、「この数値が高ければ高いほど、マネーに対する人々の信用度が高い状況」を表しており、私自身としては、今まで、「表面上の信用乗数」である「1990年前後の約13倍」がピークだと考えていた。

しかし、今回、「デリバティブの影響力」を改めて考慮すると、「簿外取引(オフバランス)で大膨張したデリバティブ」については、「信用乗数の計算に入れるべきではないか?」とも感じられたのである。つまり、「日本の信用乗数」については、現在、「日銀が出すベースマネーが約650兆円」、そして、「マネーストックのM2が約1168兆円」という状況であり、結果として、「約1.8倍の信用乗数」となっているのである。

そして、今回、この数字に調整を入れるべきだと考えているが、実際の方法としては、「2008年前後にピークを付けたデリバティブ」に関して、「世界全体で約8京円にまで達した残高が、信用乗数に対して、どのような影響を与えたのかを、イメージで把握する手法」しか取れないものと考えている。つまり、今回は、「世界の中央銀行が、協力して、相互の資金調達を図った」という状況であり、そのために、「真の信用乗数」は、「一国だけでは難しく、世界全体で考慮する必要性」が存在するものと思われるのである。

より具体的には、「金融界のブラックホール」の内部で、「世界全体の信用乗数が、2008年前後にピークを付け、その後、急速に収縮を始めている状況」のことだが、実際には、「私の想定以上に膨れ上がった信用乗数」が、現在、「1991年のソ連」などと同様に、「一挙に、1倍に近づいている段階」とも思われるのである。つまり、現在は、「インフレの大津波が、世界全体を襲い始めた段階」とも考えているが、この点に関して、注意すべき出来事は、やはり、「国債価格の暴落」、すなわち、「金利の急騰」が、「いつ、世界的に始まるのか?」だと感じている。