本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.4.26

中央銀行のテーパリング

現在、世界各国における「中央銀行のテーパリング」が話題になっているが、この点については、全くの「的外れの議論」のようにも感じている。つまり、「中央銀行のテーパリング」というのは、最初に、「中央銀行の国債買い付け」を意味する「QE(量的緩和)」が存在し、その後、「国債の買い付け金額の縮小」という、いわゆる「テーパリング」が発生するからである。別の言葉では、「なぜ、中央銀行が、国債の大量買い付けを実施しなければならないのか?」が理解されず、単に、「買い付け金額の縮小は、株価の暴落につながる恐れがある」というような意見が頻発している状況とも言えるのである。

より具体的には、かつて「禁じ手」と言われた「中央銀行の国債買い付け」が、現在では、「積極的な推奨行為」とみなされているだけではなく、「金融システム」に関する理解が不足しているために、「なぜ、中央銀行が国債を買い付け、超低金利状態を維持しているのか?」という理由も、全く無視されている状況となっているのである。つまり、「1945年の日本」と同様に、「思考停止の状況下で、根拠のない意見が議論されている状態」であり、このことも、「金融敗戦が近づいている状況」を表しているようにも感じている。

そのために、現時点で必要なことは、「過去数十年間に、どのような変化が発生したのか?」を正確に理解することである。具体的には、「1980年代の初頭に誕生したデリバティブが、2000年前後から急拡大した展開」を、具体的な数字で把握することであり、また、「なぜ、日本を中心にして、過去20年余り、超低金利状態が発生したのか?」を考えることである。

そして、この点に関して、最も重要なポイントは、「デリバティブ」という金融商品が産み出した「大量のデジタル通貨」の存在でもあるが、実際には、「金融商品の二面性」である「商品と通貨が、同時に産み出された状況」だったのである。ただし、「2008年のリーマンショック」以降の状況としては、「デリバティブのバブル破裂」により、「商品の性質」が失われたものの、「インフレでしか消滅しない性質」を持つ「デジタル通貨」の存在より、「時間稼ぎ」が可能な展開だったことも見て取れるのである。

つまり、今までは、「中央銀行が、国民の資金を借りて国債を買い付け、超低金利状態の維持が可能だった」という状況だったが、現在では、「デジタル通貨の枯渇」、そして「中央銀行の紙幣大増刷」が理解され始めるとともに、「貴金属」のみならず、「木材」や「穀物」などにも、大量の資金が流出し始めているのである。