本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.8.31

アベノミクスの後遺症

8月28日に突如として辞職を発表した「安倍首相」が、退任の理由として挙げたことは「持病の再発」だったが、この要因としては、やはり、「精神的なストレス」が指摘できるものと考えている。つまり、「森友、加計、そして、桜の問題」などによる「精神的な苦通」のことだが、私自身としては、「コロナ・ショックによるアベノミクスの行き詰まり」が最大のストレスだったようにも感じている。

具体的には、「財務省」と「日銀」が「税収減と歳出増」に悩まされ、「BIS(国際決済銀行)」が指摘するとおりに、「インフレ課税による解決策」を決断せざるを得なくなっている状況のことである。別の言葉では、「アベノミクスの正体」とも言える「国民の預金を利用した国債の大量買い付け」、そして、「超低金利状態による国家財政問題の先送り」の限界点が、はっきり見えてきた状況のことである。

しかも、今までは、「官僚による公文書の隠ぺい、改ざん」からもお分かりのとおりに、「国民が事実に気付かないこと」、そして、「金利の上昇を防ぐこと」が、「アベノミクス」が延命するための「最大の要因」だったものと思われるのである。しかし、現在では、「日本」のみならず、「欧米」においても、「金利やインフレ率の上昇を容認せざるを得ない状況」、すなわち、「アベノミクスの破綻」が明らかな状況となっているのである。

その結果として、今後は、「アベノミクスの後遺症」に悩まされる事態が想定されるが、実際には、「史上最大規模にまで膨れ上がった日本の国家債務」、そして、「7年8ヶ月で、約150兆円から約667兆円にまで大膨張した日銀のバランスシート」を、どのようにして処理するのかということである。つまり、「紙幣の増刷」という「インフレ税」が課される展開のことだが、「安倍首相」にとっては、「このような展開になることが、最も大きな精神的ストレスだったのではないか?」とも感じられるのである。

より具体的には、今後の問題点として指摘できることは、「誰が、このツケを払うのか?」ということだが、実際には、「国民全体に、被害が及ぶ状況」も想定されるのである。つまり、「バーナンキ元FRB議長」が、以前に指摘したとおりに、「新たな金融政策は、ほとんど全てが日本発である」という状況となっているために、「紙幣の大増刷」についても、「日銀から始まる可能性」が高くなっているのである。そして、この点に関する注意事項は、やはり、「インフレ指数の盲点」であり、実際には、今後、「大量の紙幣が、一斉に、実物資産に流れ込む展開」である。