本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.6.15

カサンドラの予言

ギリシャ神話に「カサンドラの予言」という話がある。「アポロンに愛されたカサンドラが、アポロンの恋人になる代わりに予言能力を授かったが、予言の力を授かった瞬間、アポロンの愛が冷めて自分を捨て去ってゆく未来が見えてしまった」という内容である。そのために、「カサンドラは、アポロンの愛を拒絶してしまうが、憤慨したアポロンは『カサンドラの予言を誰も信じないように』という呪いをかけてしまい、結果として、カサンドラが、パリスがヘレネーをさらってきたときも、トロイの木馬をイリオス市民が市内に運び込もうとしたときも、これらが破滅につながることを予言して抗議したが、誰も信じなかった」というものである。

現在、この神話は、「真理や真実が、人々に対して、正確に伝わらないこと」に対する「象徴的な寓話」として用いられているようだが、実際のところ、「多くの人々には、自分にとって不都合、かつ、快くない予言を聞こうとしない傾向」が存在するようにも感じられるのである。しかし、「世の中が激変する状況」を見て、初めて、「真理」に気付かされるようにも思われるが、現在の世界的な金融情勢は、まさに、「トロイの木馬が、イリオス市に運び込まれた状況」とも言えるようである。

具体的には、「日米欧の国々」が、歴史上、最大規模の「量的緩和(QE)」を実施した結果として、「中央銀行のバランスシート」は、未曽有の規模にまで膨らんだのだが、今後は、「アメリカ」を中心にして「量的引き締め(QT)」が、年内にも始まろうとしているからである。別の言葉では、「敵の兵士を、大量に満載したトロイの木馬」が、「世界の金融システムに組み込まれたような状態」のようにも感じているが、今後は、「膨大に膨れ上がった中央銀行のバランスシートが、実際に、どのような動きを見せるのか?」が、最も注目すべき点とも言えるようである。

つまり、単純に、「バランスシートの残高」を急減させると、「世界的な大恐慌」の再来が予想され、一方で、「減少した国債などの保有残高」を「紙幣の増発」で埋め合わせると、「世界的なハイパーインフレ」の到来が考えられるのである。そのために、これからの数か月間は、いまだに実現していない「カサンドラの予言」が、「大恐慌なのか、それとも、大インフレなのか?」を真剣に考える期間のようにも思われるが、私自身の経験からは、「今まで大恐慌の再来を恐れすぎたことが、今後、グローバルハイパーインフレを引き起こすのではないか?」とも想定され、特に、「7月の19日」が「丁の年、丁の月、そして、丁の日」となるために、大きな注目をしている。