本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2016.7.3

カルアナ総裁の最終宣告

6月26日に開かれた「BISの年次総会」で、「カルアナ総裁」は、きわめて印象深いコメントを述べられたが、特に私が注目したのは、次の「二つの言葉」だった。具体的には、「未来が現実となる時」と「三位一体化したリスク」というものだが、「カルアナ総裁」が、数年前から指摘してきたことは、「量的緩和(QE)が実施されていなかったら、とっくに、世界の金融システムが破たんしていた」、そして、「中央銀行による国債の買い支えは、問題の先送りであり、時間稼ぎにすぎない」ということだった。

つまり、「中央銀行に、過度の負担がかかりながら、かろうじて、世界の金融システムや通貨制度が維持されている状況」を、危惧し続けてきたようだが、今回は、この点に関して、「最終宣告」を発したようにも感じられるのである。具体的には、「想定していた未来が、間もなく、現実のものとなる」、また、その理由としては、「労働生産性の伸び率低下」と「過剰な債務」、そして、「政策の限界」という「三位一体化したリスク」が、世界に存在する点を指摘しているのである。

しかも、今回は、「中央銀行を守るために」という文章が、初めて付け加えられたが、この中で強調していることは、「中央銀行の独立性を守らなければいけない」ということだった。つまり、現在の「日銀」からも明らかなように、「世界の中央銀行は、量的緩和の名のもとに、大量の国債を保有している状況」であり、このことは、「中央銀行の独立性が失われた状態を意味している」と主張したかったようにも思われるのである。

そして、このような状況下で予想されることは、「過去の歴史」が繰り返されることだが、今回、「カルアナ総裁」は、「短絡的な調節方法や近道を避けながら、有効な政策をとるべきだ」と述べながらも、「再度、後悔しない政策をとることが重要である」とも結論付けているのである。

つまり、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」の総裁としては、「国家財政の破綻」や「ハイパーインフレ」などについて、「分かっていながらも、具体的にコメントできない状況」のようにも感じられたが、結果としては、婉曲的な表現を使いながら、実情を説明したようにも思われるのである。つまり、「時間的な余裕が無くなり、間もなく、過去と同様のハイパーインフレが発生する」と言いたかったようだが、この点については、たいへん近い将来、「国債バブル」が破裂した時に、「世界の金融システムや通貨制度が、完全崩壊する事態が想定される」ということでもあるようだ。