本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.11.26

スイスの国民投票

11月30日に、「スイスの国民投票」が実施されたが、内容としては、「中央銀行が保有する金(ゴールド)」に関して「国民の審判を仰ぐ」というものだった。具体的には、「海外に保有する金を、全て、自国に移転する」、「中央銀行の総資産の20%を金にする」、そして、「金の売却は行わない」というものだが、結果としては、大差の否決だったものの、このような投票が行われたことは「時代の転換点」を表しているようだ。

つまり、「1971年のニクソンショック」以降、世界の中央銀行は、長年にわたり、「金(ゴールド)」を売却してきたが、この理由としては、「金は金利が付かず、持っている必要性が無い」ということだった。そして、2000年前後の底値では、「金は石ころになった」とまで言われたが、その前後から始まったのが、「中国」や「ロシア」、あるいは、「インド」などによる「大量の買い付け」だった。

その結果として、現在では、「西洋諸国」から「東洋の国々」へと、大量に「金」が移転するとともに、「アメリカのフォートノックスに、本当に、金が存在するのか?」という点について、アメリカの内部から疑問が噴出するような状況となっている。そして、昨年の「ドイツ」に続き、今回は、「オランダ」が、米国に保管してある金を自国に移転したが、このことは、ヨーロッパの国々で、急速に、「金を手元に置く必要性」を感じたからとも言えるようだ。その結果として、現在では、「西洋諸国」から「東洋の国々」へと、大量に「金」が移転するとともに、「アメリカのフォートノックスに、本当に、金が存在するのか?」という点について、アメリカの内部から疑問が噴出するような状況となっている。そして、昨年の「ドイツ」に続き、今回は、「オランダ」が、米国に保管してある金を自国に移転したが、このことは、ヨーロッパの国々で、急速に、「金を手元に置く必要性」を感じたからとも言えるようだ。。

つまり、「第二のリーマン事件」が噂されるような状況下で、多くの国々が、「本当に安全な資産は、一体、何なのか?」を考え始めたようにも思われるのである。そして、このことは、現在の「信用本位制」に対する「不信感の増幅」であるとともに、本来の中央銀行の役割が「通貨の番人」であることを思い出してきたからとも考えられるが、この時に、「金の時価総額」と「世界のマネー総額」を考えると、実に、危機的な状況になっていることが理解できるのである。

つまり、本来の「お金」は、文字通り「金(ゴールド)」だったが、現在では、「約800兆円」の時価総額にすぎず、一方で、「世界のマネー総額」は、なんと、「10京円」を超える金額にまで大膨張している。そのために、今後は、「金価格の急騰」により、この差が埋められるものと考えているが、その時に、「金利」や「インフレ率」が、どの程度にまで上昇するかが、全く見当もつかないような状況となっており、このことが、本当の意味での「金融大混乱」とも言えるのである。