本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.5.27

官軍から賊軍へ

歴史を紐解くと、「時の権力者」は、常に、「理論」や「宗教」などを利用することにより、「政治的な優位性」を保とうとする傾向があるようだ。あるいは、「権力」が発生するための必要条件としては、一般庶民が、「理論」や「宗教」などを盲信するという点も指摘できるようだが、興味深い事実は、「どのような時代も、必ず、時と共に変化する」ということであり、また、「どれほど強固に見えた政権も、必ず、終焉の時が訪れる」ということである。

そして、「一つの時代が終了すると、混乱期を経て、次の時代が幕を開ける」ということも「歴史の真理」だと考えているが、その時々を生きる人々にとっては、「自分たちが、激動の時期を生きている」という感覚は、ほとんど存在しなかったようである。つまり、「明治維新」の時のように、「ある日突然に、官軍が賊軍に変化する」ということは、「八重の桜」のドラマのとおりに、当時の「会津の人々」にとっては、「悪夢としか言いようのない出来事」だったようにも思われるのである。

また、「なぜ、会津藩士が変化に対応できず、朝敵として扱われたのか?」という点を考えてみると、やはり、「幕藩体制への盲信」が存在したようだ。つまり、当時の人々にとっては、「幕藩体制の崩壊」などは、まったくの予想外の出来事でもあったのだが、このことは、「国内だけで、安穏とした幕藩体制が継続している間は、幕藩体制に揺るぎがなかった」ということである。しかし、実際には、「ペリーの来航」以来、「海外諸国との対応」を迫られ、結果として、「既存の幕藩体制では、対応不能な状態」にまで追い詰められたようである。

そして、このことを、現在の「世界的な金融混乱」に当てはめてみると、「西暦1600年頃」に誕生した「時は金なり」という思想が世界的に行き渡り、「世界中の人々が、お金を盲信する」という態度に変化したのが現在であり、実際には、「マネーの大膨張」が限界点に達した段階とも言えるのである。

つまり、「幕藩体制」と同様に「既存の通貨体制」が維持不能な状態にまで追い込まれているということだが、今までは、既存の経済理論が利用され、ほとんどの人々が、「デフレ」を信じ込んでしまったようである。しかし、今後の問題は、このような状況下で、本当の「インフレ」である「急激な物価上昇」が起きた時に、「官軍が、ある日突然に、賊軍に変化するような事態」が「通貨の世界」で起きることが想定されるのである。