本間宗究(本間裕)のコラム

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2012.10.5

チャイナリスクの正体

日本政府による「尖閣諸島の国有化」以降、「チャイナリスク」という言葉が盛んに使われるとともに、「中国が、日本を攻めてくるのではないか?」というような、極端な悲観論も聞かれるようになった。そして、「中国との関係が悪化することにより、日本の景気がさらに悪化する」というような意見が主流になっているようだが、少しだけ冷静になり、世界全体の動向を見てみると、まったく、違った姿が見えてくるようである。

具体的には、「チャイナリスク」という言葉は、以前から存在しており、基本的には、「中国が先進諸国の仲間入りをする過程で、資本主義のルールを学ぶときに発生するリスク」とも言えるのである。つまり、以前のような「共産主義の独裁政治」ではなく、「資本主義国家としてのビジネス」をするためには「最低限のルール」が存在するのだが、実際には、時として、「共産主義的な顔」が見えてくるということである。

しかし、今回のような「資本主義国家とは言えないような主張」を継続すると、「本当に困るのは、中国自身である」とも言えるのである。具体的には、「世界の国々が、中国から離れ、他のアジア諸国へ資金を移動させる可能性」のことだが、実際に、今回の事件により、いろいろな国の、多くの企業が、この点を真剣に考え始めた可能性があるようだ。

また、今回の特徴的な出来事としては、多くの人々が、世界的な景気の悪化を想定したのだが、このことは、「実体経済」だけを見た考えとも言え、反対に、「マネー経済」からは、まったく逆の姿が見え始めているのである。つまり、「景気を代表する商品」である「銅」の価格については、この事件に、ほとんど反応せず、価格の上昇までもが起きているのである。そして、この理由としては、「実体経済の20倍にまで膨らんだマネー経済」の存在が指摘できるようだが、現在では、この「マネーの歯車」が、徐々に、回転を始めているのである。

このように、現在、世界の景気は、急速に回復を始めている可能性があるのだが、残念ながら、ほとんどの日本人は、この点に、まったく気づいていないのが実情とも言えるのである。そのために、「景気敏感株を叩き売り、国債を買う」という、きわめてリスクの高い投資を行っているようだが、この点については、間もなく、「金や銀、そして、銅などの価格が、史上最高値を更新する」という状況を見た時に、初めて、「チャイナリスクの本質」に気付くとともに、「マネー経済の巨大さ」を実感することになるようだが、その時には、すでに、手遅れの状況とも言えるのである。